【139】 安倍首相 辞任   なぜ今なのか…?        2007.09.12


 「(インド洋での海上自衛隊の補給)活動を継続するため、民主党の小沢代表に党首会談を申し入れ、率直な思いと考えを伝えようとしたが、実質的に断られた。国民の支持・信頼の面でも、力強く政策を前に進めていくことは困難な状況だ。ここは自らがけじめをつけることによって局面を打開しなければならないとの判断にいたった」。
 午後2時から始まった記者会見で、安倍首相はこう述べて、総理大臣の職を辞することを明らかにした。


 異常な事態である。国会が開催されて所信表明演説を行い、その2日後…、今日は各党の代表演説を受けようという日であった。
 冒頭の辞任の弁も整合性がない。国際公約であると言った「テロ特措法」の継続も日程が難しくなるばかりだし、「職を賭して実現する」と言ったはずなのに、まだ、職を賭して取り組んではいないではないか。
 そもそも所信表明演説とは、これから自らが行なおうとする国政に対しての考え方を述べるものであり、政権担当に対する決意の表明である。改めて各種の施策を実行することを宣言したあとの、突然の辞任に対しては、国民はもとより各界の理解を得られるものではない。


 突然の辞任は、海外各国も驚きの表情を示している。アメリカにしても、今日の午前中にシーファー駐日大使が与謝野官房長官を訪ねていて、その場では辞任のじの字も話していない。2週間前に内閣改造を行い、新しく任命された閣僚は失われた自民党への信頼を回復しようと、意欲的な取り組みを始めたところであった。新内閣が発足して16日で総理大臣が突然に職を辞することは、政治の機能麻痺を助長する以外の何者でもない。


 安倍首相の肉体的・精神的な健康状態に、極めて重大な障害が生じたとしか考えられない。代表質問に答えることができない体調ということか。
 それであったとしても、今この時期に…というのは納得できないところである。通例では、入院するまでは政権を手放さず、病院のベッドの上から「辞任」を表明するものだが、安倍首相の場合は、政権に対する執着心が限界であったということなのか。質問に答えながら壇上で倒れる政治家の姿…を期待するのは、ドラマの世界か(苦笑)。


 午後3時、テレビは、小沢民主党代表の記者会見を伝えている。「私の40年の議員生活でも はじめてのこと」と述べて、ことの唐突さを表現している。


 いずれにせよ、安倍首相の「戦後レジウムからの脱却」を、大きな期待をこめて支持してきた私としては、誠に残念である。安倍晋三の身によほどの事態が生じているのであろうし、道半ばでの苦渋に満ちた残念な決断であろうと察するものだが、後継の政権が、戦後日本の最大の課題を忘れずに継承して、しっかりと取り組んでいってもらいたいと思う。


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